Saint Bleu

Don't you ask yourself, ”Can this be?”

いつかまた、君に会いたい

※この記事は『Summer Pockets』の感想記事です。グランドエンディングまでのネタバレを含みますのでご注意ください。

 

Summer Pocketクリアしました。

めちゃくちゃKey作品でした。というか今までのKey作品を踏襲しすぎて、馴染みの食堂で出された定食を食べてるような気持ちだった。懐かしの味。でも少しほろ苦い。

 

各ルートの感想は、個別ルートプレイしてからけっこう時間が空いてしまったのでざっくり。

 

○しろはルート

日常と遊びと不思議と。最後にプレイしたけど、このルートはALKAの伏線というか前日譚みたいなものだと思うので、いろいろ覚えてないと苦労した。未来が見える……そう来たか……となった。ヒロインではしろはが一番好きです。声と見た目が儚げでかわいい。

 

○蒼ルート

一番初めにプレイしました。なんだか遠慮がなくて、気の置けない関係で、でも初々しいところが学生カップルっぽくていいなあと思った。蒼ちゃんが一番美少女ゲームのヒロイン感あった気がする。駄菓子屋でわちゃわちゃする昼の時間と、七影蝶の不思議にかかわる二人きりの夜とのコントラストが良かった。

 

○鴎ルート

二番目にプレイしました。リトバスの美魚ルート感があった。自分の記憶と認識があやふやになっていく感覚。冒険の話はとてもわくわくして、それでもいつもどこかに不安が漂っている雰囲気が、とてもKeyっぽいと思った。特にリトバスに似てるかな。ラストシーンあたりの情景と引きが素敵。

 

○紬ルート

三番目にプレイ。紬とツムギの関係はCLANNADの志麻くんを思い出してしまった。もともと三人組が好きなのと、限られた時間をまるでずっと続いていくかのように過ごすとか、あるはずのない未来をまるであるかのように語るとか、そういうのに弱いので何回もぼろぼろ泣いてしまった。誰かのために選んだ人生だったけれど、わたしは自分で選びたいものを見つけてしまった、わたし自身の心が求めるものを見つけてしまった、という、本当に最初紬が言った通り、『わたしを探す物語』だったんだなと。むぎゅぎゅぎゅ。

 

 

○ALKA・Pocket

良い記憶でした……うみちゃんは汐ちゃんポジなのかと個別ルート時から薄々思っていたけど、個人的にはCLANNADよりRewriteだった。うみちゃん、汐ちゃんじゃなくてコタさんなんじゃないか……?と思ってしまった。物語としてすごい惹かれるんだけど、泣きはしなかったというか、涙が出ない感じの悲しさと頭の中で巡りすぎた考察が、終始心をぐるぐる渦巻いていた。

ALKAの最後のほうは、あ〜〜これ忘れるやつだ……大事なことを忘れてる気がするやつだ……この夏休みがんばったからもうゴールしてもいいよねだ……ウワ~~わかってるのに泣いてしまう~~!って感じだった。けれど、一つものすごく引っかかってたのが、はいりくんのネグレクトがなかったらうみちゃんはこんなことにならなかったのでは……ということだった……。いや無粋なのは分かってるんだけど、どうしてもそれが引っかかってしまって、永遠みたいな夏休みを過ごす前のうみちゃんという一人の女の子の人生はこれでよかったのか? 何かもっと別の未来があったんじゃないか? と思ってしまった。そう考えてみると、ALKAはRewriteでいうMoon編で、PocketはTerra編なのでは……という気持ちになってきた。書き換えることができるだろうか……彼女のその運命を……。アウロラと違って七影蝶は記憶や想いを遺してくれるけど、だからこそつらいこともある。うみちゃんは「本当に楽しいことばかりだった?」永遠みたいな夏の中、どんな気持ちでいたんだろう? Pocketがしろはの泣き顔で終わったのがさらに、納得しきれない無力感を心に残していった。Summer Pocketsの物語は、うみちゃんの人生の上に成り立ってることを考えるといろいろつらいものがあるなと思いました。そういう意味で、良い記憶でした。

 

ALKAラストで『羽のゆりかご』が流れてきたときは、いろいろな意味でぞくっとした。暗い海を一人でわたっていくような、そんな心許なさがあった。あれはうみちゃんの曲と同時に、たくさんの七影蝶に宿った人の想いの曲だったのでは。想いは海のように深くて、灯のように儚い。少しおそろしげな長い長い夏の夜のような曲だと思いました。

『ポケットをふくらませて』はとても麻枝さん……って感じで好きです。この、エンディング曲ですべてをねじ伏せられる感じ、懐かしい。夏休みを超えて、さまざまな未来があるんだって思わせる曲。うみちゃんも大人にならせてあげたかった。そんな未来ももしかしたらこの先にあるのかもしれないけれど。

 

クリアして真っ先にRewrite……って気持ちになりましたが、AIRでもあるのかな……三世代以上にわたって続いた循環を新たな世代が断ち切るという。AIR編で主人公の手が届かなくなるところも似てる。

はいりくんは往人さんと似ているようでもっと光の力を感じる。なんとなく。でもうみちゃんには、観鈴よりも何か無力感のようなものを感じてしまう。うみちゃんは往人さんと観鈴の両方の要素を兼ね備えてる感じがある。無力感というのは、うみちゃんが時間を失って本来よりも小さな子になってたこともあって、こんなぼろぼろに擦り切れた姿でゴールしてほしくなかった、って気持ちなのかもしれない。いつかまた、君に会いたい。


余談ですが、しろはの家系が過去に戻る力を持つのなら、はいりくんの家系は、思い出を預かる力を持つのかも、とか考えてました。蔵がとてもクローズアップされてたので。だから別の世界線のことも認識できる力があるのかもしれない。しろはたちが過去に戻った数だけ、それを知ることができるとか。普通の人間が見ることのできない、あり得た思い出をしまっておく力。それは未来を広げる力とも言えるのかもしれないですね。

 

いろいろ書きましたが、楽しかったです。良い夏休みでした。
二周目して、考察もいろいろしたいです。