Saint Bleu

Don't you ask yourself, ”Can this be?”

語り継がれ、生きつづける想い

※この記事はplanetarian〜星の人〜の感想記事です。配信版、劇場版のネタバレがありますのでご注意ください。






観てきました。
Twitter用に感想を書いていたら字数制限に耐えられなくなったのでこちらに書きます。もともとTwitter用に書いていたのでまとまりがないかもしれませんがご容赦ください。


まさしくタイトル通り、星の人とはなにか、星の人としての生き様とはなにかを描く話だと思えた。配信版は屑屋とゆめみの物語だったけれど、劇場版はある出会いから星に焦がれ、星の人となった一人の男の人生だった。
配信版とところどころ違う描写、音楽とともに、星の人の回想として、ゆめみとの出会いが語られる。やはりこの辺りはちょくちょくカットされている台詞などがあったけれど、劇場版ではゆめみと過ごした時間は彼の人生の大切な一部として物語に組み込まれているのだと感じた。
レビ、ヨブ、ルツの純粋さ、初めて星を見たときの輝く表情は胸を打たれるものがあった。この世界に残された希望の一雫。静かに終わっていく世界と対照的に未来の可能性を感じさせる子どもたち。大人たちが目の前の存続のみを考える中、子どもたちは星の世界に想いをめぐらせることができ、遠い先を見据える力があるのだと思えた。
そして彼の人生はこの物語のなかで人間一人分の役目を果たしたのかもしれない。修道女のロボットに待ち焦がれたように手を伸ばし、そして自分の胸にもうメモリーカードがないことに気づいた彼の表情は、自分がもう一人分としての役目を終えたことを悟ったものだという気がした。彼は星の人の役目と想いとともに、ゆめみの思い出、彼の夢までも子どもたちに託したのだと。
枕元に立った修道女に「迎えに来たのか、俺を……」と屑屋の頃の口調で言ったとき、本当に涙が止まらなくなった。星の人として生きてきた人生のあいだ、彼は何度ゆめみのことを考え、そのたび浮かぶ想いを抱えながらどんな旅をしてきたのだろうと……。
たったひとつの天国の門をくぐると、そこは満員のプラネタリウム。スタッフ一同と、再会に涙を流すゆめみ。本物の花束を受け取り、「報われた」と涙をこぼす屑屋改め星の人。彼はプラネタリウムで見た星と、瞬く星のような一人の少女を忘れられず、その記憶と想いだけが彼をここまで突き動かしていたのだと思った。出会ってしまったなら、心を動かされてしまったのなら、それを伝えずにはいられない、とでもいうような。伝えたくて、約束をかなえたくて、ただ何かに突き動かされてきた彼の人生は、幸せなものであったかどうかはわからないけれど、ゆめみの感謝の言葉できっと報われて、一人分を終えたのだと思う。
そしてプラネタリウムで投影をはじめる二人は、まさに描いた夢の通りだった。ゆめみと一緒に投影をする、いろいろな人に星を見せる、そんなかつて描いていた光景を、彼は天国でやっと叶えることができた。天国とはどんな願いも叶う場所だと、かつて語り合っていたように。
星の記憶は、ゆめみから屑屋へ、屑屋から星の人になった一人の男から、レビ、ヨブ、ルツへ、そして遥か遠くへと引き継がれた。EDに浮かんでいた星の舟は、はくちょう座の形に似ていたように思えた。元々はくちょう座のペンダントは彼の母親のものだったことを
考えると、“続いていく” “引き継がれていく”というテーマがplanetarianという物語にはあるのだろうな。他のKey作品のことを思い出してしまう。
どこまでも深い星空が続く宇宙のなかに響く声。「プラネタリウムはいかがでしょう?」ゆめみの星への想いは、星を、宇宙を越えて、遥か遠くまで伝えられたのではないか。ゆめみと屑屋が雨の中交わした、ゆめみの思い出を新しい職場に届けるという約束も、きっと長い系譜の末に叶えられたのだと思えた。誰かが星への想いを語り継ぐ限り、ゆめみも屑屋も、星の人もプラネタリウムもイエナさんも、ずっと生き続けることができる、そんな物語だと私には思えました。


planetarianは小さな出会いの話であり、星と人の壮大な物語であり、けれどやはり人生の作品であると私は思いました。人であろうと、ロボットであろうと、誰かが生きた証は、誰かが覚えていてくれる限りずっと残されていく、そんなことを星は教えてくれるのだ、そんなメッセージを感じました。
私もplanetarianという作品によってより星に惹かれるようになった一人でありますし、そうした想いをこうして書き残したり、忘れないで伝えていくことが、planetarianに教えられたことなのだと思います。観た人みんなを星の人にする作品なのだなあ。

いろいろ好き勝手に書きましたが、本当に素晴らしい作品でした。小説のエルサレムやチルシスとアマントを知っているとさらに気づかされることが多いので、劇場版を観た人は必ず小説を読もう!というレベル。ぜひ売店に置いてほしい。ここまで読んでくださってありがとうございました。

この作品が、星への想いとともに、たくさんの人に伝えられることを願ってやみません。それから、planetarianは人生。